取引先と秘密保持契約(NDA)を結んで業務を進めた後、契約自体は終了しても、開示した秘密情報の扱いはそこで終わりません。多くのNDAには「契約終了後も一定期間、秘密保持義務が存続する」旨の条項が置かれています。本記事では、契約終了後の秘密保持義務の考え方と、契約書自体を廃棄してよいタイミングについて、経済産業省・国税庁の公開情報をもとに整理します。

秘密保持義務は契約終了後も残ることがある

NDAには、契約の有効期間(情報を交換できる期間)とは別に、**「秘密保持義務は本契約終了後も○年間その効力を維持する」といった存続条項(残存条項)**が置かれるのが一般的です。

これは、契約自体が終了しても、受け取った秘密情報を保護し続ける義務や、目的外使用の禁止、契約終了時の資料の返還・消去義務などが引き続き効力を持つようにする条項です。経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック」でも、秘密保持・目的外使用の禁止・契約終了時の資料の返還/消去義務等を条項に盛り込む例が紹介されています。

存続期間として何年を定めるかは契約当事者間の合意次第であり、法令で一律に定められているわけではありません。実務上は、後述する消滅時効の期間を目安に設定されることが多いとされています。

存続期間の目安:消滅時効との関係

秘密保持義務違反があった場合の損害賠償請求権は、民法上の債権であるため消滅時効の対象になります。民法第166条第1項では、債権の消滅時効について次のとおり定められています。

  • 権利を行使できることを知った時から 5年間
  • 権利を行使できる時から 10年間

このいずれか早い方の経過により時効消滅します。NDAの存続条項で「契約終了後5年間」「10年間」といった期間が設定されることが多いのは、この消滅時効の考え方を踏まえた実務対応と考えられます。ただし、契約でこれと異なる期間(1〜3年程度の短い期間や、逆に無期限)を定めることも当事者間の合意により可能です。

契約書自体を廃棄してよいタイミング

秘密保持義務の存続期間が満了した後であっても、**契約書という書面(データ)自体をすぐに廃棄してよいとは限りません。**確認すべき観点は次の2つです。

① 紛争リスクへの備え

秘密保持義務違反が疑われた場合、契約書は「どのような義務を負っていたか」を証明する重要な証拠になります。消滅時効期間(5〜10年)が経過するまでは、リスク管理の観点から契約書を保管しておくことが望ましいとされています。

② 税法上の保存義務との重複

契約書が同時に取引の証憑書類としての性質を持つ場合(対価の支払いを伴う業務委託契約に付随するNDA等)、国税庁の情報によれば帳簿書類として別途7年間(個人事業主で前々年の所得300万円以下の場合は5年間)の保存義務が生じる場合があります。この保存期間は秘密保持義務の存続期間とは別のルールであるため、両方の期間を確認し、長い方に合わせて保管することが必要です。契約書の保存期間の詳細は 契約書・帳簿書類の法定保存期間 を参照してください。

廃棄時に確認しておきたいポイント

  • NDAの存続条項に「返還・消去義務」が定められている場合、廃棄・返還の方法や報告義務の有無を契約書本文で確認する
  • 電子データで保存している契約書は、電子帳簿保存法上の保存義務がある期間中は、単純な削除ではなくルールに沿った保存・廃棄を行う
  • 廃棄の実施記録(廃棄日・方法)を残しておくと、後日の説明責任に対応しやすくなる

注意点

  • 存続条項の期間や範囲は契約書ごとに異なるため、実際の廃棄タイミングは締結した契約書の条項を個別に確認する必要があります
  • 秘密保持義務の有効性や、個別の紛争における法的判断については、本記事の範囲を超えるため、弁護士等の専門家にご相談ください

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まとめ

秘密保持契約(NDA)の秘密保持義務は、契約自体が終了した後も存続条項によって一定期間(実務上は民法の消滅時効に相当する5〜10年程度を目安とする例が多い)効力を持ち続けることがあります。契約書の廃棄は、この存続期間に加えて、証憑書類としての税法上の保存義務の有無もあわせて確認したうえで判断することが必要です。

本記事は経済産業省・国税庁の公開情報をもとに整理したものです。個別の契約における存続期間の解釈や廃棄可否の判断については、弁護士・税理士等の専門家にご相談ください。