電子契約サービスで締結した契約データは、電子帳簿保存法上の「電子取引データ」として保存義務の対象になります。この保存には「タイムスタンプの付与」がよく知られていますが、実はタイムスタンプは必須ではありません。本記事では、国税庁の公開情報をもとに、タイムスタンプ以外で真正性(データが改ざんされていないこと)を確保する方法を整理します。

「真実性の確保」とは何か

電子帳簿保存法では、電子取引データを保存する際に、次の2つの要件を満たす必要があるとされています。

  • 可視性の確保(検索・表示できる状態にすること)
  • 真実性の確保(保存後にデータが改ざんされていないことを担保する措置)

このうち真実性の確保について、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」では、次の4つの方法のいずれか一つを満たせばよいとされています。

  1. タイムスタンプが付与されたデータを取引先から受け取る
  2. データを受け取った後、速やかに自社でタイムスタンプを付与する
  3. データの訂正・削除の履歴が残るシステム、または訂正・削除ができないシステムを利用して授受・保存する
  4. 訂正・削除の防止に関する事務処理規程を策定し、備え付けて運用する

タイムスタンプ(方法1・2)はあくまで選択肢の一つであり、方法3・4を満たせばタイムスタンプなしでも真実性の要件を充足できます。

方法3:訂正削除履歴が残るシステム・できないシステム

国税庁の解説によれば、このシステム要件を満たすには、次のいずれかの仕様が必要です。

  • 電磁的記録の訂正・削除が物理的にできない仕様であること
  • 電磁的記録の訂正・削除を行った場合に、訂正・削除前の内容が記録・保存され、事後に検索・閲覧・出力ができる仕様であること

多くのクラウド型電子契約サービスは、締結後の契約データそのものを改変できない設計になっており、また締結までの操作ログ(誰がいつ何を操作したか)をサービス側で保持する仕組みを備えています。こうした設計が上記の要件に該当するかどうかは、利用しているサービスの公式ヘルプ・仕様説明で個別に確認する必要があります。

方法4:訂正削除の防止に関する事務処理規程

自社(個人事業主の場合は本人)で、電子取引データの訂正・削除に関する事務処理のルールを定めた規程を作成し、備え付けて運用する方法です。国税庁の特設サイトではサンプル様式が公開されており、コストをかけずに導入できる方法として案内されています。

この規程の具体的な作り方は、事務処理規程のサンプルと作成方法 で解説しています。電子契約データも「電子取引データ」の一種であるため、同様の規程で対応可能です。

どの方法を選ぶか

方法主な負担
タイムスタンプ付与(方法1・2)サービス側でタイムスタンプ機能を持つ必要がある。費用が発生する場合がある
訂正削除履歴が残るシステム利用(方法3)利用中のサービスの仕様確認が必要。追加費用は原則不要
事務処理規程の運用(方法4)規程の作成・備付けのみで運用可能。追加費用は不要

多くのクラウド型電子契約サービスは、締結済みデータの改変を許さない設計(方法3に相当し得る仕様)を採用しています。この場合、契約データの保存についてはタイムスタンプの有無を意識しなくてよい可能性がありますが、サービスの公式説明で自社の運用が要件に合致するか確認することが必要です。判断に迷う場合は、方法4の事務処理規程をあわせて備えておくと、要件充足の根拠を明確にできます。

注意点

  • 4つの方法のうちどれか一つを満たせばよく、複数を同時に満たす必要はありません
  • 電子契約サービス自体の機能仕様は各社で異なるため、自社の運用がどの方法に該当するかはサービス公式のヘルプ・利用規約・機能説明で確認してください
  • 真実性の確保に加えて、検索要件(可視性の確保) も別途満たす必要があります

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まとめ

電子契約データの真正性確保は、タイムスタンプだけが方法ではありません。訂正・削除履歴が残るシステムの利用、または訂正削除防止の事務処理規程の運用によっても要件を満たせます。利用中の電子契約サービスがどの方法に該当する仕様かは、サービス公式の説明で確認することが実務上のポイントです。

本記事は国税庁の公開情報をもとに整理したものです。自社の運用が要件を満たしているかの最終判断については、税理士等の専門家にご相談ください。