令和6年(2024年)1月以降、電子メールや EC サイトを通じて授受した請求書・領収書等の取引情報は、電子データのまま保存することが義務化されました。その保存要件のひとつが 検索要件 です。専用の会計システムを導入しなくても、ファイル名の命名ルールを工夫することで検索要件を満たせる場合があります。本記事では、国税庁の公開情報をもとに、具体的な命名例と運用のポイントを整理します。

検索要件とは

電子帳簿保存法では、電子取引データを保存する際に、次の 3つの項目 で検索できる状態にしておく必要があります。

  • 取引年月日
  • 取引金額
  • 取引先

また、日付や金額については 範囲指定での検索、複数項目を 組み合わせた検索 ができることも求められています(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」)。

この要件を満たす方法は、以下の2つが代表的です。

  1. 規則的なファイル名で命名し、フォルダの検索機能を活用する
  2. 索引簿(Excel 等の一覧表)を作成し、その検索機能を活用する

専用システムがなくても、どちらかの方法で対応が可能とされています。

ファイル名による対応:命名規則の具体例

基本フォーマット

国税庁の解説では、ファイル名に次の3要素を 規則性をもって 入力することで、フォルダの検索機能を通じて検索要件を満たせるとされています。

YYYYMMDD_金額_取引先名.pdf

具体例

取引内容ファイル名の例
2026年6月17日、株式会社○○から受領した110,000円の請求書20260617_110000_株式会社○○.pdf
2026年6月5日、△△商店から受領した5,500円の領収書20260605_5500_△△商店.pdf
2026年5月31日、□□サービスのサブスク利用明細(3,300円)20260531_3300_□□サービス.pdf

国税庁が示している例も「20210131_110000_㈱霞商店」のように、取引年月日・金額・取引先の順となっています(「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」より)。

命名規則を設定するうえでのポイント

  • 日付は YYYYMMDD 形式(8桁)にする。年・月・日の順にすると、フォルダの並び替えで時系列が保てます
  • 金額は税込金額を記録するのが一般的です。取引先との請求書が税込表示であれば、その額をそのまま入れます
  • 取引先名は略称でも可ですが、同一フォルダ内で表記を統一する(「㈱」「株式会社」など)ことで検索精度が上がります
  • フォルダ構成と命名規則は社内(個人の場合は自分だけでも)でルールを決め、運用を統一することが重要です

命名規則だけでは不十分な点

ファイル名での対応は、あくまで「フォルダの検索機能」を前提としています。パソコンの OS 標準の検索(Windows エクスプローラー、macOS Finder 等)でファイル名検索を行う場合、取引年月日の範囲指定や複数項目の組み合わせ検索には制約がある場合があります。

国税庁は「索引簿と組み合わせる方法」も示しており、Excel などでファイル一覧(取引日・金額・取引先・ファイル名)を管理することで、複雑な検索条件にも対応しやすくなります。

索引簿による対応:Excel 一覧表の例

専用システムを用いずに、Excel やスプレッドシートで索引簿を作成する方法も認められています。

索引簿の列の例:

取引年月日取引先金額(円)区分ファイル名
2026-06-17株式会社○○110,000請求書20260617_110000_株式会社○○.pdf
2026-06-05△△商店5,500領収書20260605_5500_△△商店.pdf

索引簿を使う場合は、Excel の「フィルター」機能や「検索」機能を使って、日付・金額・取引先での絞り込みが可能になります。ファイル名命名と索引簿の両方を組み合わせることで、より確実に検索要件を満たすことができます。

小規模事業者は検索要件が緩和される

課税売上高が一定規模以下の事業者には、検索要件を緩和する 特例 が設けられています。

適用要件

  • 基準期間(前々年)の 課税売上高が 5,000万円以下 であること
  • 税務職員から 電子取引データのダウンロードを求められた際に応じられる 状態にあること

この特例に該当する場合、3項目での検索機能・範囲指定・組み合わせ検索という検索要件のすべてが不要になります。多くの個人事業主はこの特例の対象になります。

ただし、「ダウンロードの求めに応じる」ためには、データがどこに保存されているかを把握しておく必要があります。ファイル名や保存フォルダのルールを整理しておくことで、税務調査時の対応がスムーズになります。

「真実性の確保」も合わせて必要

検索要件(可視性の確保)に加えて、電子取引データの保存には 真実性の確保(データの改ざん防止)も必要です。個人事業主がコストをかけずに対応できる方法として、「正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」 の作成・運用があります。

詳細は 電子帳簿保存法における電子取引データの保存要件(個人事業主向け) をご参照ください。

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まとめ

電子取引データの検索要件は、専用システムがなくても ファイル名の命名規則(取引年月日・金額・取引先を規則的に入力)で対応できます。課税売上高が 5,000万円以下の小規模事業者はこの要件が緩和されますが、税務調査に備えてデータの所在を把握しておくことは引き続き重要です。索引簿(Excel 等)と組み合わせることで、より確実な対応が可能です。

なお、本記事は公式情報の集約を目的としています。保存方法の適否や税務調査時の対応については、税理士等の専門家にご相談ください。